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手術への怖さを和らげるために、麻酔選びより先に整理したいこと
人工歯根(インプラント)の手術が怖いときは、鎮静法があるかどうかだけで決めず、まず持病や飲んでいる薬を医師と確かめ、過去の痛い経験を伝えてから麻酔や治療方法を選ぶことが大切です。この記事では、局所麻酔と鎮静法の役割の違い、手術中と手術後の痛みへの備え、当日の運転を控えることなどをまとめます。過去の処置で痛みをがまんした記憶があると予約をためらいがちですが、前もっての準備と確かめる手順を知ることで、落ち着いて治療を決められます。
この記事の要点まとめ
- 手術への怖さや過去の経験、持病、服用薬を事前に伝え、体の状態をふまえて治療方針を相談する。
- 局所麻酔は手術部位の痛みを抑え、笑気麻酔や静脈内鎮静法は緊張を和らげる目的で併用される。
- 術後の薬や食事制限、当日の運転・送迎を確認し、期間や費用、入れ歯・ブリッジも含めて検討する。
人工歯根の手術が怖いとき、麻酔の種類より先に何を確認する?
人工歯根の手術が怖いときは、鎮静法の有無から医院を決めるのではなく、過去の怖い経験を歯科医師に伝えることと、糖尿病などの状態や処方薬の確認を先に行います。全身の健康状態によって手術の時期や選べる麻酔方法が変わり、場合によっては病状の管理を優先する必要があるためです。
麻酔を選ぶ前に、過去の痛みや手術への怖さを相談する
当院では、相談の際にお口や歯の困り事を時間をかけて伺い、必要に応じて口腔検査やレントゲン撮影、既往歴・病歴の問診を行っております。若い頃の抜歯で痛みを訴えても処置が続いた経験や、「歯科医院は痛くならなければ行かないところ」と感じてきたお気持ちも、遠慮なくそのままお伝えください。
糖尿病と処方薬を確認し、必要なら病状を管理してから手術を検討する
当院では、糖尿病や高血圧などの持病がある場合、医科歯科連携カルテでこれまでの病気や飲んでいる薬の情報を共有しています。そのうえで、血圧、心臓や肺の働き、血液検査、糖尿病のこれまでの経過や血糖のコントロールの状態などをふまえて、医師と治療の計画を考えております。糖尿病が治療のさまたげになる場合は、まず病状を整えてから手術を行う方針です。
糖尿病の治療中であっても、一律にすぐ手術や希望する鎮静法を受けられるとは限りません。全身状態の確認と病状管理が先になります。他院で基礎疾患を理由に治療を断られた患者様も、医科での病状管理を含めて可能性を検討いたしますので、生涯を見据えた長期的な予後を第一に一緒に考えていきましょう。
ポイント
麻酔の種類を選ぶ前に、むかしの痛い思いやこわさ、糖尿病などの持病と飲んでいる薬を歯科医師に伝え、体の調子を確かめてもらうことが先です。
局所麻酔と鎮静法は何が違い、手術中の痛みや怖さはどう和らげる?

手術中の痛みを抑えるのが局所麻酔であり、怖さや緊張を和らげるのが鎮静法です。鎮静法を併用する場合でも、痛みを遮断するために局所麻酔は行います。なお、持病や服用薬によっては鎮静法を利用できない場合があります。
局所麻酔は痛みを抑え、鎮静法は怖さや緊張を和らげるという役割の違い
局所麻酔は処置する部分の感覚を麻痺させて痛みを抑える方法で、意識ははっきりしています。麻酔注射そのものの痛みを和らげるため、歯茎に塗る表面麻酔や細い針が使われることもあります。また、手術前から鎮痛薬を用いる先行鎮痛という考え方も研究されています1。
一方、鼻からガスを吸う笑気麻酔(吸入鎮静法)や点滴を使う静脈内鎮静法は、不安や緊張をやわらげる方法で、局所麻酔といっしょに使います。体の状態や飲んでいる薬によっては選べないことがあるため、前もって確かめておく必要があります。
| 方法 | 主な役割 | 意識の状態 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 局所麻酔 | 手術部位の痛みを抑える | はっきりしている | 鎮静法を使う場合も併用する |
| 笑気麻酔 | 不安や緊張を和らげる | 意識は保たれる | 鼻からガスを吸入する |
| 静脈内鎮静法 | 強い恐怖心や緊張を抑える | うとうとした状態になる | 点滴で薬を投与する |
当院で導入している静脈内鎮静法・笑気麻酔と費用の確認
当院では静脈内鎮静法と笑気麻酔を導入しており、インプラント手術中の麻酔管理は麻酔科専門医が担当しております。どちらの方法が患者様に合うかは、先述した全身状態や処方薬の確認を踏まえて、事前の相談で決定いたします。
当院の静脈内鎮静法は保険がきかない自由診療で、費用は1回55,000円〜82,500円(税込)です。笑気麻酔も自由診療で、1回11,000円〜33,000円(税込)です。金額は治療にかかる時間によって変わり、インプラント治療と自費のかぶせ物などの治療では、笑気麻酔の費用は別にかかりません。
手術中に痛みや不安が出たときの伝え方を、事前に決めておく
手術中に痛みや違和感が出たときは、左手を挙げるなどの合図を事前に担当医と決めておく方法があります。また、手術中は生体モニターを装着し、血圧や脈拍、酸素飽和度などを確認しながら処置を進める体制がとられます。
過去の経験から「痛くても止めてもらえないのではないか」と心配な方もいるでしょう。その場合は相談の段階で「痛みが出たらどう伝えればよいか」「鎮静中でも意思表示はできるか」を質問として持っていき、担当医と話し合っておくと落ち着いて臨みやすくなります。
手術後の痛みや腫れ、当日の運転や仕事にはどう備える?
手術中の痛みへの対応と、手術後の痛みや腫れへの備えは分けて考える必要があります。術後の鎮痛薬の使い方、食事や糖尿病の薬の調整、当日の移動手段については、手術の日程を決める前に確認しておきましょう。
術後の痛み・腫れが出やすい時期と、鎮痛薬の使い方・受診の目安
口の中の手術のあとは、しばらく痛みや顔の腫れが出ることがあり、日がたつにつれて少しずつ落ち着いていきます。インプラント手術のあとに非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)と呼ばれる痛み止めを使うと、使わない場合より痛みがやわらぎ、追加の痛み止めも少なくて済むことが示されています2。腫れを抑える薬(ステロイド)を手術後に使う方法3や、手術の前から痛み止めを使っておく方法1も、痛みや腫れを抑える目的で使われることがあります。
処方された鎮痛薬や抗菌薬は、飲む量や回数を自分の判断で変えず、出されたときの説明どおりに飲みましょう。経過には個人差がありますが、強い痛みや腫れが長引く場合、いったん治まった痛みがぶり返す場合、出血が止まらない場合は、我慢せず早めに歯科医院を受診しましょう。
糖尿病の薬と食事制限は自己判断で変えず、手術前に確認する
静脈内鎮静法などを用いる場合、手術の数時間前から食事や飲水の制限がかかることがあります。食事がとれないときに、血糖を下げる飲み薬やインスリン注射をいつもどおり使うと、低血糖が起こることがあります4。
薬の服用を自己判断で中止したり変更したりすることは避け、必ず事前に医師の指示を確認してください。相談時にはお薬手帳を持参し、普段の服薬時間や食事のとり方を詳しく伝えておきましょう。
手術当日の運転と付き添いは先に決めておく
静脈内鎮静法で使う薬は、効き目が切れるまで時間がかかります。そのため、手術当日は車やバイク、自転車の運転を控えるよう求められ、帰りにご家族の付き添いや送迎が必要になる場合もあります。選ぶ麻酔の種類によって当日の制限が異なるため、事前の確認が欠かせません。
ふだんから車で仕事に行ったり、家族の送り迎えをしたりしている方は、手術の日だけでなく、そのあと数日の仕事や家の予定も合わせて決めておきましょう。当院へは、JR籠原駅から国際十王バス熊谷駅行きに乗り、「石丸病院前」でおりてすぐです。駐車場は約70台分あります。
ポイント
手術後の痛み止めの飲み方、食事を控えるときの糖尿病の薬の飲み方、当日の運転を控えることや送り迎えの手配は、手術日を予約する前に、医師やご家族と話しておきましょう。
鎮静法を受けられることだけを理由に、手術を決めてよい?
鎮静法を受けられるかどうかは、手術を決めるときの材料の一つにすぎません。手術前にどこへ入れるかを細かく調べることや、治療にかかる期間・費用、人工歯根以外の治療方法も含めて見比べ、納得したうえで方針を決めることが大切です。
麻酔とは別に、CT画像とガイドで埋入位置を事前に検討する
麻酔や鎮静法が手術中の痛み・怖さを和らげる工夫であるのに対し、手術そのものの事前準備として行われるのが画像診断とシミュレーションです。当院では、歯科用CTの画像をランドマークシステムで解析して人工歯根の埋入位置や角度をシミュレーションし、その結果を反映したカムログガイドを手術に用いる事もあります。
このガイドは、CT検査やお口の模型のデータをもとに患者様一人ひとりに合わせて作製する装置で、顎の骨の中にある神経や血管を避けた埋入を補助します。麻酔の選び方とあわせて、こうした事前検査がどのように行われるかも確認しておきましょう。
麻酔だけで決めず、期間・費用とほかの治療方法も含めて相談する
当院では、インプラント治療を前提に結論を出すことはせず、ブリッジや入れ歯、それらを組み合わせた方法も提示しております。それぞれの期間・費用とメリットだけでなくデメリットも丁寧にご説明し、ご相談を通じて治療方針を決めております。
人工歯根は、通常は保険がきかない自費診療です。費用は医療機関や本数、骨を足す治療(骨造成)をするかどうかで変わり、当院では相談のときに見積もりをお出しします。また、手術のあとに出血・腫れ・痛み・感染などが起こるおそれがあり、治療後も定期的なお手入れに通う必要があります。
人工歯根が骨とくっつくまでの期間は、下あごで3~4ヶ月ほど、上あごで4~6ヶ月ほどが目安です。お仕事やご家族の介護などの予定もふまえて、通院の予定を考えておきましょう。
ご自身の残っている歯を守り、10年、20年先を見据えた予防処置と長期的なお口の健康につなげるために、現在の状況とこのまま放置した場合の見通しも含めてご説明いたします。まずはお薬手帳をお持ちのうえ、お気軽にご相談ください。
よくある質問
Q. 歯の麻酔注射そのものが痛そうで怖いのですが、なぜ痛みを感じるのですか?
麻酔注射の痛みは、針が歯茎に刺さるときの刺激や、麻酔液が組織に入る際の圧力、麻酔液と体温との温度差などによって生じます。また、強い炎症がある場合や緊張しているときは痛みを感じやすくなります。痛みを和らげる工夫として、針を刺す前に歯茎の感覚を鈍らせる表面麻酔を塗ったり、細い注射針を用いてゆっくり麻酔液を注入したりする方法があります。注射自体が苦手な場合も、事前に歯科医師へ伝えておきましょう。
Q. 40代・50代で奥歯の抜歯を勧められショックを受けています。すぐ人工歯根に決めるべきですか?
抜歯と言われて動揺しているときに、すぐ人工歯根の手術を決める必要はありません。まずは本当に歯を残す治療(根管治療や歯根端切除術など)が難しい状態なのか、抜歯した部分をそのままにすると噛み合わせや残りの歯にどう影響するのかを確認しましょう。そのうえで、部分入れ歯・ブリッジ・人工歯根それぞれの長所と短所、通院期間、費用を聞き、ご自身の体調や生活に合わせて選ぶことが大切です。
Q. 麻酔や鎮静法を使う際、全身の状態はどのように確認されるのですか?
局所麻酔や鎮静法の前には、持病やアレルギー、ふだん飲んでいる薬についてお聞きし、血圧など体の調子を確かめます。手術中は生体モニターをつけて、血圧や脈、心臓の動き、血の中の酸素の量などを見ながら進めます。持病がある場合は、前もって内科の主治医と話を共有し、体の調子を見ながら麻酔の種類や量を合わせます。
参考文献
1. Mattos-Pereira GH, Martins CC, Esteves-Lima RP et al. Preemptive analgesia in dental implant surgery: A systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Medicina oral, patologia oral y cirugia bucal. 2021. PMID: 34415001 / DOI: 10.4317/medoral.24639
2. Khouly I, Braun RS, Ordway M et al. Post-operative pain management in dental implant surgery: a systematic review and meta-analysis of randomized clinical trials. Clinical oral investigations. 2021. PMID: 33839939 / DOI: 10.1007/s00784-021-03859-y
3. Wagner JC, Johnson TM, Gilbert WA. Should Periodontists Prescribe Postoperative Oral Corticosteroids to Control Pain and Swelling? A Systematic Review. Clinical advances in periodontics. 2022. PMID: 33988318 / DOI: 10.1002/cap.10169
4. 低血糖 | 医療情報検索 | 日本大学医学部附属板橋病院:Nihon University Itabashi Hospital. https://www.itabashi.med.nihon-u.ac.jp/search/term/214
5. 国立がん研究センター「口腔がんの原因・症状について」 https://www.ncc.go.jp/jp/information/knowledge/oral/001/index.html
日本歯科大学歯科専門学校 歯科技工士科卒業 歯科技工士登録
Branemark Implant Technical Aspects 取得
平成7年
日本歯科大学新潟生命歯学部卒業 歯科医師免許取得
平成11年
日本歯科大学大学院新潟歯学研究科終了 歯学博士号取得
平成11~18年
日本歯科大学新潟歯学部附属病院口腔外科 講師
平成18年~
日本歯科大学新潟歯学部附属病院インプラントセンター臨床講師
平成21年
石丸安世記念熊谷ディアベテスクリニック歯科 医長就任
FRIALIT2 implant system FRIADENT社(ドイツ)公認インストラクター
カムログインプラントアルタテント社(スイス)テクニカルアドバイザー
SPI implant thoman medical社(スイス)インストラクター
国際インプラント学会 認定医
日本口腔診断学会 認定医
日本歯科大学歯学会
日本口腔外科学会
日本補綴歯科学会
日本口腔インプラント学会
IADR JADR
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