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抜いた奥歯を補う前に、糖尿病の方が整理しておきたいこと
抜歯のあと、食事のたびに反対側ばかりで噛んでいる。持病があっても手術を選べるのか、費用はどこまでかかるのか、気がかりは尽きないものです。この記事では、入れ歯・ブリッジ・インプラントの違いと、糖尿病の通院状況が治療の判断にどう関わるかを整理します。歯科医師に相談する前に、ご自身の希望をまとめる材料としてお使いください。
この記事の要点まとめ
- 入れ歯・ブリッジ・インプラントは、着脱や周囲の歯への影響、手術の有無が異なり、口の状態を踏まえて検討します。
- 費用や保険適用、通院期間、治療後の手入れを確認し、食事や勤務など生活上の希望を歯科医師に伝えます。
- 糖尿病では血糖の状態や歯周病、顎の骨を確認し、内科の主治医とも情報を共有して治療方針を相談します。
噛み心地・残る歯への負担・手術の有無で見る三つの方法

奥歯を補う主な方法は、入れ歯(部分入れ歯)・ブリッジ・インプラントの三つです。どれが合うかは、残っている歯や顎の骨の状態によって変わります1。
| 方法 | 噛み心地の特徴 | 周囲の歯への影響 | 手術 |
|---|---|---|---|
| 入れ歯 | 取り外し式で慣れが必要 | 留め具をかける歯に負担がかかる場合がある | 通常は不要 |
| ブリッジ | 固定式 | 支えにする歯を削ることが多い | 通常は不要 |
| インプラント | 固定式 | 隣の歯を削らずに補える場合がある | 必要 |
表はあくまで一般的な傾向です。実際に選べる方法は、診査の結果をもとに判断します。
入れ歯は仕事中の食事でも使える?
使うことはできますが、取り外し式のため慣れるまでは違和感が出やすく、調整に何度か通うことがあります。奥歯が一部ない場合は部分入れ歯を検討し、留め具(クラスプ)をかける歯には負担がかかります1。休憩時間に外して洗えるかどうかも、職場での使い勝手を考える手がかりになります。
ブリッジは固定式でも、隣の歯を削る必要がある?
多くの場合、失った歯の両隣を支えにするため、その歯を削って被せ物を装着します。一番奥の歯を失ったときなど、支えを確保できない位置では適用が難しいこともあります1。ご自身の歯を残す視点から、削る量と、連結部分の下を清掃しやすいかを確認しておくと判断しやすくなります。
インプラントは隣の歯を残せる一方、手術を伴う
顎の骨に人工の歯根を埋め、その上に人工歯を固定する方法です。隣の歯を削らずに補える場合がある反面、外科処置になるため、CTで骨の量や神経の位置を調べ、全身状態も確認します2。糖尿病があるというだけで、受けられるかどうかが決まるわけではありません。
抜いた奥歯をそのままにせず、残る歯も診てもらう
片側だけで噛む状態が続くと、残った歯に負担が集まりやすくなります3。歯周病で抜歯した場合はほかの歯にも炎症が残っていることがあるため、補う方法を決める前に歯周病の検査と治療を進めるのが一般的な流れです。
ポイント
三つの方法の違いは「取り外すか」「隣の歯を削るか」「手術をするか」。残る歯の診査を先に受けると、選べる方法が見えやすくなります。
費用と保険、通院期間・治療後の負担で選ぶ
費用は支払う金額だけでなく、通院で仕事を休む日数や治療後の手入れの手間まで含めて考えると比べやすくなります。
保険診療と自費診療では、何を確認する?
入れ歯とブリッジは保険診療で作れる場合が多く、材質を選ぶと自費診療になります。インプラントは、病気や事故で顎の骨を広く失った場合などの限られた条件を除き、公的医療保険が適用されない自費診療です2。
インプラント治療(自費診療)の一般的な目安は、次のとおりです。
- 費用:1本あたり総額30万〜50万円程度(検査・診断、手術、人工歯の費用を含む)。骨が足りず骨造成(骨を補う処置)が必要な場合は、さらに数万〜十数万円程度かかることがあります。
- 治療期間:手術から人工歯が入るまで3〜6か月程度。骨造成を行う場合や上の奥歯の場合は、さらに長くなることがあります。
- 通院回数:検査から人工歯の装着まで5〜10回程度。装着後も定期的なメンテナンスの通院が続きます。
費用は処置の内容などによって異なります。上記は一般的な相場であり、当院の費用ではありません。当院の費用・期間・回数は診察のうえでご案内します。
見積もりでは、検査・手術・人工歯・治療後のメンテナンスがどこまで含まれるかを確かめておきましょう。
抜歯後から噛めるようになるまでの通院期間
抜歯した部分の歯茎や骨が落ち着くのを待ってから、補う治療に移ります。入れ歯やブリッジは型取りと調整を含めて数週間〜数か月、インプラントは手術後に骨と結合するのを待つ期間が必要です。通院回数は口の状態で変わるため、勤務日を相談時に伝えておくと予定を組みやすくなります。
痛みや腫れ、食事のしづらさはいつ相談する?
抜歯やインプラント手術のあとは、数日ほど痛みや腫れ、出血が出ることがあります。入れ歯の場合は歯茎に当たって痛む箇所が出やすく、調整で和らげるのが一般的です1。
インプラント治療(自費診療)で起こりうる主なリスク・副作用は、次のとおりです24。
- 手術後の痛み、腫れ、出血、内出血(頬やあごのあざ)
- 傷口の感染や、傷の治りの遅れ
- まれに、下あごの神経が傷つくことによる唇やあごのしびれ・感覚の鈍さ
- 上の奥歯の場合、まれに上顎洞(鼻の横にある空洞)の炎症
- 人工の歯根が骨と結合せず、取り除いて治療をやり直す場合がある
- 治療後、インプラント周囲の歯茎の炎症や骨の減少、人工歯の欠け・ゆるみ
糖尿病がある方は、血糖の状態によって傷の治りが遅れたり、感染が起こりやすくなったりすることがあります5。
痛みが強まる、腫れが引かない、食事がとれないといったときは、予約日を待たずに連絡してください。勤務中の食事への影響も、あらかじめ伝えておくと安心です。
長く使うための歯磨きと、合わなくなったときの対応
どの方法も、使い始めてからの手入れで状態が左右されます3。入れ歯は毎日外して洗い、合わなくなれば調整や作り直しを行います。ブリッジは支えの歯にむし歯や歯周病が起きると、その歯の治療が必要です。インプラントは周囲の歯茎に炎症が起きることがあり、日々の清掃と定期的な確認が予防に関わると整理されています4。
糖尿病と歯周病の状態で、向いている方法はどう変わる?
「糖尿病だからインプラントは受けられない」と一律に決まるわけではありません。血糖の調節状況、歯周病、残る歯、顎の骨を合わせて方法を考えます。
HbA1cと糖尿病の通院状況は、抜歯後の治療にどう関わる?
HbA1c(過去1〜2か月の血糖の平均を反映する値)は、傷の治りや感染のしやすさを考える手がかりの一つです5。ただし数値だけで手術の可否を決めるのではなく、血糖の変動、治療薬、合併症の有無まで含めて判断します2。2型糖尿病の方のインプラントの経過を調べた研究もありますが6、対象や条件は限られており、一人ひとりにそのまま当てはめることはできません。
内科の主治医と歯科で情報を共有し、必要に応じて病状を整えてから手術を考えるのが基本的な進め方です。
歯周病が残る場合、治療後の手入れをどう続ける?
歯周病が残ったまま補う治療を進めると、支えの歯やインプラントの周囲にも炎症が広がりやすくなります3。インプラント周囲の病気には歯周病の既往や清掃状態が関わるとされ、リスク因子の管理と定期的なメンテナンスを治療計画に組み込むことが勧められています4。
40代で抜歯した方も、失った本数と顎の骨を確認
年齢だけで方法が決まることはありません。失ったのが奥から何番目の歯か、何本か、支えになる歯が残っているか、顎の骨は足りているかで選択肢は変わります1。骨の幅や高さは歯科用CTで立体的に確かめ、足りないと言われた場合も骨造成(骨を補う処置)によって検討の対象になることがあります2。
埼玉県・熊谷市で相談するときに伝えたい通院と食事の希望
相談の前に、次の点をメモしておくと話が進みやすくなります。
- 勤務日と通院できる曜日、通いやすい時間帯
- 費用についての考え方や上限の目安
- 食事で困っている場面(職場の昼食、家族との食事など)
- 糖尿病の通院先、服薬内容、直近の検査結果
当院への相談を含め、内科と歯科での情報共有や、ご自身の歯を残せるか、各方法のメリット・デメリットを確認することが大切です。手術を避けたい方は入れ歯やブリッジ、隣の歯を削りたくない方はインプラントや入れ歯を軸に、まずはその希望をそのまま歯科医師に伝えるところから始めてみてください。
ポイント
糖尿病があっても、血糖の状態・歯周病・顎の骨を合わせて判断します。検査結果と生活の希望を持参すると、選択肢を具体的に話し合えます。
よくある質問
Q. HbA1cが高めでも、抜歯や歯科治療は受けられますか?
A. 数値だけで一律に決まるものではありません。処置の内容や血糖の変動、服薬状況を踏まえ、内科の主治医と相談しながら進め方を決めます。急を要さない外科処置は、血糖を整えてから行うこともあります。
Q. 歯の治療後、歯磨きはしてもいいですか?
A. 傷口を避けて歯磨きは続けられますが、抜歯や手術の直後は傷口に歯ブラシを直接当てないなどの配慮が必要です。再開の時期や磨き方は、処置を担当した歯科医師の指示に従ってください。
Q. 総入れ歯はどうやって付けるのですか?
A. 上の入れ歯は、指で歯茎に沿わせて押し上げるように入れ、下の入れ歯は軽く押さえて装着します。噛んで押し込むと変形や痛みにつながるため、指で位置を合わせてください。
Q. 他院でインプラントは難しいと言われました。相談してもよいですか?
A. セカンドオピニオンとして別の歯科医師の意見を聞くことはできます。骨の量や全身状態を改めて調べたうえで、インプラント以外の方法も含めて選択肢を確認できます。
参考文献
1. 公益社団法人 日本歯科医師会 https://www.jda.or.jp/
2. 日本口腔インプラント学会 https://www.shika-implant.org/
3. 厚生労働省「健康づくりサポートネット(口腔・歯の健康)」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/teeth
4. Carra MC, Blanc-Sylvestre N, Courtet A, et al. Primordial and primary prevention of peri-implant diseases: A systematic review and meta-analysis. Journal of clinical periodontology. 2023. PMID: 36807599 / DOI: 10.1111/jcpe.13790
5. 厚生労働省「健康づくりサポートネット(疾病・健康に関する情報)」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/
6. Andrade CAS, Paz JLC, de Melo GS, et al. Survival rate and peri-implant evaluation of immediately loaded dental implants in individuals with type 2 diabetes mellitus: a systematic review and meta-analysis. Clinical oral investigations. 2022. PMID: 34586502 / DOI: 10.1007/s00784-021-04154-6
日本歯科大学歯科専門学校 歯科技工士科卒業 歯科技工士登録
Branemark Implant Technical Aspects 取得
平成7年
日本歯科大学新潟生命歯学部卒業 歯科医師免許取得
平成11年
日本歯科大学大学院新潟歯学研究科終了 歯学博士号取得
平成11~18年
日本歯科大学新潟歯学部附属病院口腔外科 講師
平成18年~
日本歯科大学新潟歯学部附属病院インプラントセンター臨床講師
平成21年
石丸安世記念熊谷ディアベテスクリニック歯科 医長就任
FRIALIT2 implant system FRIADENT社(ドイツ)公認インストラクター
カムログインプラントアルタテント社(スイス)テクニカルアドバイザー
SPI implant thoman medical社(スイス)インストラクター
国際インプラント学会 認定医
日本口腔診断学会 認定医
日本歯科大学歯学会
日本口腔外科学会
日本補綴歯科学会
日本口腔インプラント学会
IADR JADR
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