インプラント治療においては、何らかの原因によってインプラントが抜け落ちることがあります。これを「インプラントの脱落」と呼びます。
治療前・手術中・手術後、いずれかの場面で問題が起きたり、メンテナンスを怠った場合、インプラントが脱落することがあります。
今回は、それぞれの時期ごとに分け、「インプラントが抜ける原因」についてご説明します。
目次
■インプラント治療前の問題点
インプラントの治療前に以下のような問題があった場合、手術中や手術後にインプラントが脱落することがあります。
≪1.インプラント治療前の問題≫
1-1 歯周病治療を行っていない
1-2 骨粗しょう症や糖尿病など、各診療科目との連携が不十分
1-3 診断が不完全である
1-4 治療計画の立案内容に無理がある
1-5 骨造成を行っていない
1-6 粗悪品を使っている
1-7 細菌感染対策の設備不足
1-1 歯周病治療を行っていない
歯周病(特に中程度~重度の歯周炎)にかかっている場合、インプラント治療前に歯周病治療を行っていないと歯周病によって歯槽骨の骨結合が阻害され、手術後にインプラントが抜け落ちてしまうことがあります。
{対策方法}
インプラント治療前に精密検査を行い、しっかりと歯周病治療を行ってくれるクリニックを選ぶことが大切です。
1-2 骨粗しょう症や糖尿病など、各診療科目との連携が不十分
骨粗しょう症や糖尿病を患っている患者様にインプラント治療を行う場合、治療前に各診療科目との連携が不十分だと病気の影響で骨結合や歯ぐきの治癒が進まず、手術後にインプラントが抜け落ちてしまうことがあります。
{対策方法}
インプラント治療前に各診療科目の医師としっかり連携を取り、手術が行える状態か確認してくれるクリニックを選ぶことが大切です。
1-3 診断が不完全である
1型糖尿病や免疫不全症、白血病、ビスホスホネート製剤を使用している方など、インプラント治療を受ける際に十分な検討が必要な患者様に手術を行った場合、インプラントが定着せず抜け落ちてしまうことがあります。
また、インプラントの埋め入れに必要な顎の骨の高さや幅、骨量が不足している患者様に手術を行った場合、インプラントが定着せず抜け落ちてしまうことがあります。
{対策方法}
医科歯科連携を強化し、事前にインプラント治療を十分に検討した後、ブリッジや入れ歯など、他の補綴治療の検討を行います。
診察時にはCTをはじめとした精密機器を使い、インプラント治療を行えるかしっかり見極めることが大切です。
1-4 治療計画の立案内容に無理がある
手術前の治療計画の立案内容に無理があり、適切ではない位置にフィクスチャーを埋め入れた場合、インプラントが定着せず抜け落ちてしまうことがあります。
治療計画の立案内容により、フィクスチャーが顎の骨を突き破るなどの重大な事故が発生することもあります。
{対策方法}
ご自身に合った治療計画を立案してもらうためには、クリニック選びの際に以下の2点をチェックしておくことが大切です。
・CTやガイドシステムなどの精密機器を備えているか
・インプラント治療を担当する歯科医師の経験は豊富か
1-5骨造成を行っていない
顎の骨の高さや幅、骨密度が不足している患者様に骨造成をせずに手術を行った場合、フィクスチャーを支えるのに必要な顎の骨の骨結合を確保できず、手術後にインプラントが抜け落ちてしまうことがあります。
{対策方法}
骨造成を行っているクリニックを選ぶことで、顎の骨が不足している場合でもインプラント治療が可能になるケースがあります。
1-6 粗悪品を使っている
科学的エビデンスや臨床性に乏しい粗悪品や廉価なコピー品のインプラントパーツを使っている場合、十分な骨結合を得られなかったりパーツの破損が起きてしまい、手術中や手術後にインプラントが抜け落ちてしまうことがあります。
{対策方法}
クリニック選びの際は、科学的エビデンスや十分な臨床に基づいて作られた質の高いインプラントパーツを使用しているか、チェックしておくことが大切です。
1-7 細菌感染対策の設備不足
高性能洗浄機や高圧蒸気滅菌器(オートクレーブ)、使い捨てできるディスポーザブルアイテムなど、細菌感染を防ぐのに必要な器具や機器が不足している場合、手術中に細菌感染を起こしてしまうことがあります。
手術中に細菌に感染した場合、細菌感染が原因で患部の炎症や化膿が起き、骨結合が阻害されて手術後にインプラントが抜け落ちてしまうことがあります。
{対策方法}
クリニック選びの際は、細菌感染対策に必要な器具や機器をしっかりと備えているかをチェックしておくことが大切です。
■インプラント手術中の問題点
インプラント手術中の問題により、フィクスチャーが定着せず脱落することがあります。
≪2.インプラント手術中の問題≫
2-1 手術中のドリリング時のオーバーヒート
2-2 細菌感染対策の不備
2-1 手術中のドリリング時のオーバーヒート
フィクスチャーの埋め入れでドリリングを行う際、冷却が不十分だとオーバーヒートを起こしてしまうことがあります。オーバーヒートが発生すると顎の骨がやけどをした状態になり、骨結合がさまたげられ(やけどを起こした部分の骨の代謝ができなくなる)、フィクスチャーが定着せず抜け落ちる場合があります。
{対策方法}
「ドリルでインプラントを埋め入れるとき、顎の骨が熱くなりませんか」など、カウンセリングの際にオーバーヒート対策について歯科医師にたずねておくとよいでしょう。
2-2 細菌感染対策の不備
細菌感染対策の器具や機器を適切に使わなかった場合、手術中に細菌に感染して炎症や化膿が起き、骨結合が阻害され、フィクスチャーが定着せず抜け落ちてしまうことがあります。
{対策方法}
クリニック選びの際は歯科医院のHPを確認し、以下の細菌感染対策の器具や機器を備えているかチェックしておくことが大切です。
・高性能洗浄機
・高圧蒸気滅菌器(オートクレーブ)
・ディスポーザブルアイテム(使い捨て品:手袋、紙コップなど使い捨て可能な物)
・口腔外バキューム
など
■インプラント手術後の問題、メンテナンス不足
インプラント手術後、以下のような問題やメンテナンス不足により、インプラントが脱落することがあります。
インプラント手術後の問題、メンテナンス不足は患者様に原因があるものが多いです。手術後は「歯科医師に任せていれば大丈夫」ではなく、患者様ご自身でしっかりとセルフケアを行い、定期メンテナンスを受けることが大切です。
≪3.インプラント手術後の問題、メンテナンス不足≫
3-1 手術直後、定められた量の抗生剤を飲まなかった
3-2 手術直後に硬い物を噛むなど、フィクスチャーに刺激を与えてしまった
3-3 治療後、毎日の歯磨きや歯科医院で受ける定期メンテナンスを怠り、インプラント周囲炎を発症してしまった
3-1 手術直後、定められた量の抗生剤を飲まなかった
手術直後、処方された抗生物質を飲み切らなかった場合、患部が炎症や化膿を起こして骨結合が阻害され、フィクスチャーが抜け落ちてしまうことがあります。
{対策方法}
手術直後は定められた量の抗生剤を飲み切るようにしましょう。
3-2 手術直後に硬い物を噛むなど、フィクスチャーに刺激を与えてしまった
手術直後、患部の歯で硬い物を噛むなどして刺激を与えた場合、骨結合が阻害されてフィクスチャーが抜け落ちてしまうことがあります。
{対策方法}
手術後はフィクスチャーが骨と結合して安定するまで、患部の歯で噛まないようにしましょう。
3-3 治療後、毎日の歯磨きや歯科医院で受ける定期メンテナンスを怠り、インプラント周囲炎を発症してしまった
インプラントの治療後、毎日の歯磨きや歯科医院で受ける定期メンテナンスを怠った場合、インプラント周囲炎を発症して歯槽骨が溶け、インプラントが抜け落ちてしまうことがあります。
{対策方法}
インプラントの治療後は毎日のセルフケアをしっかり行い、併せて、歯科医院で定期メンテナンスを受けましょう。
【細菌感染対策を徹底し、安全性・精密性を高めたインプラント治療をご提供します】
安全性・正確性の高いインプラント治療を受けるためには、今回ご紹介した点を見極めてクリニックを選ぶことが重要です。
特に大切なポイントとしては以下の4点があります。
1.医科歯科の連携をしっかり行っている
2.衛生管理をしっかり行っている
3.CTやガイドシステムなど、精密な治療を行うために必要な器具・機器を備えている
4.インプラントの経験が豊富な歯科医師が治療を担当する
≪熊谷ディアベテスクリニック歯科のインプラント治療の取り組み≫
熊谷ディアベテスクリニック歯科では、すべてのインプラント治療を経験豊富な医長が担当します。
①細菌感染対策の徹底
当院では以下の器具・機器を備え、細菌感染対策を徹底しています。
・高機能洗浄機
・高圧蒸気滅菌器(オートクレーブ)
・ディスポーザブルアイテム(使い捨て品)
など
②CTおよびカムログガイドによる治療計画の立案
治療前にはCTおよびカムログガイドによるシミュレーションを行い、綿密に治療計画を立案します。
③インプラントガイドによる精度の高いフィクスチャーの埋め入れ
手術ではインプラントガイドを用いるため、適切な位置への精度の高いフィクスチャーの埋め入れが可能です。
④治療後の定期メンテナンス
治療後は定期的にメンテナンスを行い、患者様の歯や顎、インプラントの状態をチェックします。お口やインプラントに異常がある場合は迅速に処置・治療を行います。メンテナンスではむし歯や歯周病を予防するためのお口のクリーニングも行います。
{併設の内科と連携し、糖尿病の方のインプラント治療にも対応しています}
当院は内科併設の歯科医院です。糖尿病をはじめとする生活習慣病の患者様の歯科治療にも対応しています。
内科と綿密に連携を取ることで、生活習慣病の患者様でもインプラント治療を行える可能性を高められます(※)。必要がある場合は患者様のかかりつけの医師との連携も行います。
(※)血糖コントロールができないなど、状態が安定しない
ケースはインプラント治療を行えない場合があります。
「失った歯の治療方法で悩んでいる」
「インプラント治療の安全性に疑問がある」
「糖尿病だが、インプラント手術が受けられるか知りたい」
など、歯のお困りごとやインプラント治療に関する疑問・ご質問がある方は当院までお気軽にご相談ください。相談費は無料です。